第146回 定例(現地)研究会 テーマ:里山再生と食の安全 ―放射能汚染と戦う原木しいたけ栽培― 1、日時:11月16日(土)12:00〜16:30 2、場所:「なかのきのこ園」 http://www.jaea.go.jp/02/press2013/p13102901/ Eバイオミディア2013年第2号 “社団法人 日本生物工学会”の会誌 |
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研究所所長 安富六郎 氏の挨拶 |
NPO法人里山再生と食の安全を考える会 代表 飯泉孝司 氏の挨拶 |
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出荷前のきのこ(しいたけ) |
原木を洗浄し、放射性物質を除去する機械。完全な除去はできない。 |
除染について説明を受ける参加者 |
廃棄処分を待つ原木。各原木には番号が札に付けられている。 |
処分される原木。きのこが栽培されたままの状態。 |
生産者との話し合いの様子。 |
里山の保存と再生を行っている現地の様子。左の青色は竹炭を造る施設(炭焼き小屋)で、ドラム管を利用している |
なかのきのこ園でとれたきのこでBQを嗜む参加者 |
1.参加者 山崎農業研究所 12名参加 NPO法人 里山と食の安全を考える会 4名参加 内1名は話し合いの途中で仕事上から対席 2.研究会速報(要旨) 「なかのきのこ園」は筑波山麓の麓にあって、原木しいたけ栽培、本物にこだわること40年、原木本数とシイタケ生産量は日本一と言われてきた。しかし福島の3.11原発事故は里山を汚染し福島からの原木供給を受けていたなかのきのこ園は原木の入手が不能になった。放射能との戦いが続くなかで自然・農・食の本来の姿を求め、これを原木栽培を里山の森林の若返りに結びつけ、里山と原木きのこ再生に取り組んでいる。「なかのきのこ園」代表、飯泉孝司さんの進めている「里山の再生と食の安全を考える会」はその信念の現れである。 福島原発事故以来、地元および西日本の放射能汚染のないところから原木を取り寄せている。しかしコストは高い。原木のセシウム放射性セシウム濃度の指標値は50(ベクレル/kg:乾燥重量)に規制されている。原木を高圧水で洗浄するが、キノコはセシウムを成長の過程で濃縮するから出荷時には原木の放射性セシウム濃度よりも高い値になる(基準値:一般食品で100ベクレル/kg)。洗浄効果は思うほど期待できないので、原木に規制値よりも厳しい安全指標値を適応している。しかし、なお若干の基準値以上のセシウム検出もあるので、その除去に苦慮している。 キノコ生産には、原木に菌子を植え、低温の水に浸水させた後に、最適の湿度と温度に保った「芽だし室」で発芽させる。1週間経つと収穫できる。収穫後の原木は養生フレーム室で1〜2ヶ月間休ませた後、再び冷水につけて刺激を与え、次の栽培のための発芽を促す。このような原木のサイクル管理で、1年間に5回程度の収穫をくり返す。この後、原木はオガクズ、チップに砕かれて、マイタケなどの栽培に利用される。室内暖房の燃料にもなるが環境面から制約されている。 見学後に話し合いを行った。事故発生で汚染された原木は全体の80%を占め、すべて廃棄したが、大損害を受けた。東電と交渉するなど、一応解決したが、原木の洗浄に苦闘している。汚染対策の苦労に比べると害虫被害などは問題にならない。茨城県では農産物出荷停止の多くはすでに解除されたが、シイタケは残されている。森林が汚染されているからである。このまま里山の現状を放置しておけば、今後は原木すら供給不能になる。地域と連携を保ちながら、シイタケ栽培を全国規模で里山保全運動に結びつけることが今後の課題となろう。この運動を多くの人に伝え、協力して貰えるように山崎農研、われわれも努力したい。 (文責:安富、益永、田口 ) |